編み物作家伊藤浩子 V&A収蔵の傑作「竹林」「もみじの舞」誕生秘話!戦時中も編み続けた驚異の人生
編み物作家として長年活躍し続ける伊藤浩子さん。彼女の作品はまるで一枚の絵画のように美しく、2021年には英国のヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)に手編み作品として初めて収蔵されるという快挙を達成しました。
4歳から編み物を始め、戦時中の苦しい時代も手を休めず、20歳で全国コンクール最優秀賞を受賞。70年以上にわたり編み物に情熱を注ぎ続けた伊藤浩子さんの人生と、代表作「竹林」「もみじの舞」の誕生秘話を詳しく紹介します。
伊藤浩子さんのプロフィール
伊藤浩子さんは1932年に神戸市でお生まれになりました。6人きょうだいの3番目として育ち、幼少期に東京へ移った後、編み物と出会います。
都立駒場高校に通い、高校時代から本格的に編み物の道を歩み始めました。恩師である渡辺イルゼ先生に師事し、ヨーロッパの先進的な技法やデザインを学び、イルゼ先生のご主人である東京大学美学科教授・渡辺護先生からは色彩学の基礎を教わりました。
1953年、20歳の頃に大日本雄弁会講談社主催の第1回全国編物コンクールで最優秀賞・高松宮妃賞を受賞。この受賞をきっかけに、編み物作家としての道が大きく開けました。
以下に伊藤浩子さんの主なプロフィールを表でまとめます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 生年 | 1932年 |
| 出身 | 神戸市(幼少期に東京へ) |
| 学歴 | 都立駒場高校卒業 |
| 恩師 | 渡辺イルゼ先生(編み物技法)、渡辺護先生(色彩学) |
| 受賞歴 | 1953年 全国編物コンクール 最優秀賞・高松宮妃賞 |
4歳で始まった編み物との出会いと幼少期
伊藤浩子さんが編み物と出会ったのは、わずか4歳の頃でした。下の妹が生まれたため、母が手をかけられなくなったタイミングで、棒針と毛糸を与えられ、編み方を教わったそうです。
最初に作った作品はお人形にかける小さな毛布。一目一目丁寧に編む作業が楽しく、すぐに夢中になったといいます。母や祖母から自然と受け継がれた編み物の文化が、幼い心に深く根付きました。
幼少期の伊藤浩子さんは、編み物をしながら家族の様子を見守るような穏やかな毎日を送っていたようです。この頃からすでに、編み物はただの遊びではなく、彼女の心を豊かにする大切な時間となっていました。
戦時中の苦難を乗り越え、編み物を続けられた理由
太平洋戦争の時代、物資が極端に不足する中でも伊藤浩子さんは編み物を手放しませんでした。古いセーターをほどいて毛糸をほどき直したり、真綿を使って代用糸を作ったりしながら、作品作りを続けました。
終戦の数ヶ月前には群馬県渋川市へ疎開。12歳で終戦を迎えましたが、厳しい環境の中でも編み物は彼女の心の支えとなったようです。
この時期の経験が、後の作品に込める「丁寧さ」や「美しさ」へのこだわりを生んだのかもしれません。伊藤浩子さんは戦後の混乱期も編み物を続け、技術を磨き続けました。
恩師との出会いと学生時代の本格的な飛躍
高校時代、伊藤浩子さんは渡辺イルゼ先生と運命的な出会いを果たします。イルゼ先生はヨーロッパの編み物技法を日本に紹介した先駆者で、伊藤浩子さんは先生のもとに通い詰め、デザインや色彩のセンスを徹底的に学びました。
高校生ながら先生の私設秘書のような役割も担い、取材対応やスケジュール管理を手伝うなど、編み物の世界に深く入り込んでいきました。
この時期の学びが、彼女の作品を「ただのニット」ではなく、芸術作品の域に高める基盤となりました。20歳での全国コンクール優勝は、こうした積み重ねの結果です。
編み物教室の開設と長年の指導者人生
1965年頃から伊藤浩子さんは自身の編み物教室を本格的に主宰。チャリティーバザーも開始し、以後長年にわたり作品展を開催してきました。
教え子たちとともに活動する姿は、編み物を通じたコミュニティ作りの象徴でもあります。70年以上にわたる教室運営では、多くの女性たちが美しい作品作りに取り組む姿を見てきました。
伊藤浩子さんは「ここでは全員が美しいものを作ろうとする気持ちでつながっている」と語り、技術だけでなく心の豊かさを伝える指導を続けてきました。
代表作「竹林」と「もみじの舞」の誕生秘話
伊藤浩子さんの最高傑作の一つである「竹林」は、ジャケットとスカートのアンサンブルです。特注で染めた9色の毛糸とラメ糸を使い、光と風に輝く竹林を表現。竹の自然な伸びやかさをデザインに活かした力作です。
もう一つの「もみじの舞」は、フード付きマント。軽井沢で実際にもみじを観察・収集し、色鮮やかな紅葉の舞をドラマチックに編み上げました。長年かけて集めたオリジナル毛糸コレクションが、色彩の豊かさを支えています。
これらの作品は2021年11月、V&A博物館の東洋部に手編み作品として初めて収蔵されました。世界的な評価を受けた瞬間です。
以下に2作品のポイントを表でまとめます。
| 作品名 | 制作年 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 竹林 | 2009年 | 9色特注毛糸+ラメ使用、ジャケット&スカートアンサンブル |
| もみじの舞 | 2011年 | フード付きマント、紅葉の自然な表情を詳細に再現 |
V&A博物館収蔵の快挙と国際的な評価
V&A博物館への収蔵は、伊藤浩子さんにとって大きな栄誉でした。東洋部で手編み作品が永久保存されるのは初めてのこと。作品の芸術性と技術の高さが、世界に認められた証です。
2024年には教え子16人とともに博物館を訪問。平均年齢75歳というグループで、喜びを分かち合いました。伊藤浩子さんはこの経験を「感動で涙が止まらなかった」と振り返っています。
現在も続く現役生活とこれからの展望
今も編み物作家として第一線で活躍する伊藤浩子さん。教室での指導や作品制作、チャリティ活動などを精力的に続けています。
長年の経験から、編み物は技術だけでなく「幸せを編み込む」行為だと語ります。つらい時も編み物が心を支えてくれたという経験が、教え子たちへの温かい指導につながっています。
伊藤浩子さんの人生は、編み物を通じて美と情熱を追求し続けた軌跡そのものです。これからも彼女の作品が多くの人々に感動を与え続けることでしょう。
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